ご挨拶
こんにちは、ツキシマです。
コンプレッサーの使い方「第3回目」です。
今回はコンプレッサーの基本パラメーターの中編です。
「アタック」と「リリース」の考え方についてみていきたいと思います。
動画の目次です。
アタック、リリース、最後にまとめと次回予告です。
それでは、アタックから見ていきたいと思います。
アタック
アタックの概念
アタックというパラメーターは、コンプレッサーが圧縮を始めてレシオで設定した比率に達するまでの「時間」を操作できるものです。(下図参照)
メカニズムを順番にみていきたいと思います。
アタックをプラグインで設定できる最速「0.1ms」、レシオを「4:1」に設定した場合です。
1-設定したスレッショルド値を音量が超える
2-コンプレサーが圧縮し始める
3-スレッショルド値を超えた音が「0.1ms」でレシオ設定「4(4分の1)」の音量になる
といった流れです。
ここで注意するのは、音が出てから「0.1ms」で圧縮が始まるのではなく、音がスレッショルドに達してから「0.1ms」でレシオの設定値の音量になるということです。
Tips1(ミリセカンド)
「DTM」では「ms(ミリセカンド)」がよく使われます。
「1ms = 1000分の1秒( 0.001秒)」です。
「1000ms = 1秒」です。
その他の数値は下図で確認してみてください。
アタックの考え方
アタックの設定をするときに、「音源のアタック感を出したい」のか「引っ込めたいのか」で設定をどうするか考えます。
例えばドラムのスネアで、アタック感を出しつつ音をまとめたい時はどうすれば良いのか考えると、基本的にはアタックを遅めに設定します。
スネアのような音のピークが速い楽器の場合、アタックを速めに設定してしまうと圧縮が速く始まり、スネアのトランジェントも圧縮されてしまうことになり、アタック感が薄れてしまいます。
ここで、アタックを最速にした音を再生してみます。
動画内チャプター「01:45 アタックの考え方」内の「02:25」付近より音を確認できます。
・アタック最速「0.1ms」
・アタック最適「15ms」
・アタックを最も速い状態から最も遅い状態まで再生しながらツマミを動かした音
項目 | パラメーター |
---|---|
アタック | 0.1ms |
リリース | 250ms |
スレッショルド | -20dB |
次に適性と思われるアタックの設定をした音です。
項目 | パラメーター |
---|---|
アタック | 15ms |
リリース | 250ms |
スレッショルド | -20dB |
以上の音を比べてみると、アタックを最速にした方の音は少し奥まった感じに聴こえます。
次に、アタックを最も速い状態から最も遅い状態まで再生しながらツマミを動かしてみます。(動画内で確認できます。)
ツマミを回していくとコンプが掛かる量が減っていき、段々と音が前に出てくる感じになります。
これはアタックの設定値がスネアのピークより後ろになり、コンプが掛からなくなってきているためです。
以上の結果をまとめると、スネアの場合は「アタックを遅く設定する」のが正解な感じがしますが、そう決めつけてしまうと上手くいかない場合も必ずありますので、ケースバイケースで考えることが大事です。
Tips2(音の前後感)
ミックス作業時に、音を前に出したり、うしろに持っていく演出をするのにコンプのアタックを使用する場合があります。
前に出したい音は、「アタックを遅めに設定してトランジェントを活かしつつアタック感を出す」、うしろにしたい音は「アタックを速い設定にして演出する」といったテクニックがあります。
比較
アタックの設定値を変えてスネアの音がどのように変化するか比較してみたいと思います。
最初の部分の音に注目してみると違いが感じ取れると思います。
まずはコンプレッサーを掛けない素の音を聴いてみたいと思います。
動画内チャプター「04:44 比較1」内にて音を確認できます。
・コンプ無しの音
・アタック「0.1ms」
・アタック「15ms」
・アタック「400ms」
アタックの遅い設定の方がスネアのアタック感が強く、速い設定の方がアタックが潰されている感じがわかると思います。
次は、リリースについて見ていきたいと思います。
リリース
リリースの概念
リリースというパラメーターは、音のピークを過ぎて設定したスレッショルド値を下回った音の圧縮を終了するまでの時間を操作するものです。
こちらもメカニズムを順番にみていきたいと思います。
1-リリースが短い設定の場合
コンプレッサーもすぐに圧縮を止めますので、速い時間で原音に戻ります。
2-リリースが長い設定の場合
スレッショルドを下回った音にもリリースが長い設定だとコンプレッサーが動作しますので、圧縮が継続されます。
また、リリースを長すぎる設定にしてしまうと次の音の頭にもコンプが掛かります。
その結果、出したいアタックが潰れてしまいコンプレッサーが掛かりっぱなしの状態になることもあります。
あえてそうするケースもあると思いますが、楽器によって設定を使い分ける必要があります。
今回は、キックの音がリリースの設定値を変えることでどのように変化するか比較検証していきますが、その前にキックの音の特性についてのお話です。
キックの音について
ドラムのキックは低音成分が多い音です。
そして低音成分は、高い音より遅れてピークに達します。
アナライザーを表示して再生してみます。
高音部分と低音部分の動きの違いに注目して見て下さい。
動画内チャプター「07:16 キックの音について」内にてキックの音とアナライザーの動きを確認できます。
高音部分に比べて低音はゆっくり動いているのが分かります。
ということは、リリースを長く設定すると、それだけコンプレッサーが長く掛かるために、遅れてくる低音も多く圧縮されることになります。
逆にリリースを速い設定にした場合、低音は自然な感じで残りますが、キックの音が長くなり曲の雰囲気に合わなくなる場合があります。
ここで、リリースを動かしながらキックを再生してみます。
キックの後ろの方の部分に注意しながら聴いてみて下さい。
動画内チャプター「07:16 キックの音について」内「08:22」付近より、リリースを動かしながら再生したキックの音を確認できます。
音が変わっていく感じが分かりましたでしょうか。
私がリリースを設定するときは、低音が消えすぎない(リリースが長すぎない)ように注意するのと、「次のキックの頭にコンプが掛からないリリースポイントを探すようにしています。」
比較
改めてリリースを3つの設定で再生して検証してみます。
まずはコンプレッサーを通さないバイパスの音で再生します。
動画内チャプター「09:14 比較2」内にて音を確認できます。
・コンプ無しの音
・リリース「1ms」
・リリース「100ms」
・リリース「2000ms」
Tips3(プリセットを使うとき)
プリセットを利用してそのままコンプを掛ける場合は、「スレッショルド」と「リリース」は調整しておくことをお勧めします。
理由として、リリースが長くてコンプがかかりっぱなしだと、下図ような波形になる時があります。
最初の音だけ大きくて、後の音はコンプがずっと掛かって平らな状態です。
これは避けたほうが良いと思います。
そのためには、次の音の前でコンプの掛かりが切れるように設定するのが理想だと思います。
ただし、ステムミックスやバストラックにコンプを掛ける場合、次の音の前でコンプを切れるようにするのは、よほどリリースを速い設定にしても不可能です。
そういった場合は専用のバスコンプなどを使用して浅く掛けます。
音をまとめたトラックにバスコンプを上手く掛けると、トラックにまとまりが出来ます。
次は、まとめと次回予告です。
まとめと次回予告
まとめ
「アタック」と「リリース」の設定は、楽曲のテンポや楽器の音色によっても調整が必要です。
また、一言でドラムの「キック」や「スネア」と言っても、使用するキットによっては音が全然違いますので、その都度ベストな設定を探していくことになります。
ボーカルやギターなども、歌い方やフレーズによって設定は様々です。
毎回私も悩みながら設定を探していますが、その時間が結構好きです。
次回予告
次回の音楽堂のコンプレッサーの基本パラメーター後編では、「ゲイン」と「ミックス」、「サイドチェイン」などの使い方をみていきたいと思います。
また次回の動画も観て頂けたら嬉しいです。
次回のブログ記事↓
それでは、最後までご視聴ありがとうございました。
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